鬼の棲み処

普通な人「おーが」の記憶を逃がす場所、ただの備忘録

初勝利



悔し泣き出来るのは真剣に向き合ってる証拠。最後に悔し泣きしたのて何時やろ?
そんな事を考えて日々ぼんやり過ごしてる自分に気付いた男おーがです、みなさんこんばんは。
今日の日記は完全に記念、記録の類なんで一部の人以外、他人が読んでも面白くないと思うよ。


今日は某所で柔道の試合、UKTのデビュー2戦目。
瞬殺されたデビュー戦から半年、UKTなりに考えて、試して、我慢して修練してきたはず。
今回の大会は、男女別、学年別、学年ごとの基準値の上下で分ける大雑把な体重別て事で、実力通りの結果が出る。
裏を返せば負けても言い訳効かんちゅう話。

我が家から会場まで、車で2時間位かかる上に、受付が8:30からて事で8:00に現地集合のお達しが道場から下されてるもんやから、前日の夜に移動してきて車中泊
昨夜のUKTは21:00まで練習した後、晩ご飯食べて、風呂入って、車に乗り込むなり就寝。
そのまま朝までぐっすりやから、体調に問題無いはず。

8:30からの計量で「小学6年生男子軽量の部」の規定クリア。
その計量が終わると手渡される大会パンフレットには、本日のトーナメント表が載っていて、1回戦の相手が記されている。
UKTの相手はNくん。言うても、こっちは大会2回目やからどの程度の子かさっぱり解らん。
飼い主様と2階の観覧席からなんとなく試合会場見下ろしてると、体格的に小学校高学年、背中にNと名前の入った名札が縫い付けてある男の子の姿を発見。

「あっちゃあ〜・・・。」
飼い主様がため息をつく。おーがも同じ気持。
Nくんは同じ道場の子と打ち込みをしてたんやが、柔道経験者の飼い主様が見ても、柔道ド素人のおーがが見ても強い事が解るくらいのレヴェルにある。
おーがの目から見て解るのは、何度打ち込んでも投げる直前の姿勢、足の位置が毎回同じである事。そしてそのスピード。
つまり、かなりの速度で動いても体勢が崩れないボディバランスと、必ず同じ体勢になるくらい打ち込んでいるその練習量。
飼い主様的には、大内狩り(?)からの背負い、小外掛け(?)からの背負いと基本的な連携で打ち込んでいるが、その正確さとバリエーションから、明らかにトップクラスである事が見て取れたらしい。

そして、パンフレットの組合わせ表見ながら「別人である可能性」を探っていると、UKTと同じ道場の子達が集まってきた。
「UKTの相手誰なぁん?」
「ん〜Nくんやて。」
「あ・・・めっちゃ強いで?」
「UKTくん誰とやんのん?」
「ん?Nくんやって。」
「え〜!背負いばっかやけどめっちゃ強いよ〜!」
どうやら強い事と背負いが得意なことが階級も学年も関係無しで知られてるみたいだ。
飼い主様は背負い対策をUKTに授けてるが、所詮は付け焼き刃、通用しやんよねぇ。
ここで、UKTと同じ学年の重量級で、道場のキャプテンが現れて、UKTの相手を知る。
「あ〜あいつなぁ。ちょっと前の別の大会で2位やったし、K(UKTと同学年、同クラスの全国大会優勝者)と引き分けた事あるくらい強いよ。Y(UKTより強い同じ道場の子)がずっと勝てやんもん。」
はい、見事なトドメの情報ありがとう、もう、どうにもならんね。
柔道限定の話やったら、おーが(42歳、得意技は全裸でアニメ鑑賞)ですら勝てやんかもしんない。


割りと絶望的な気持ちで
「くじ運悪いよねぇ。」(デビュー戦の相手がその日の優勝者やったり)
「勝つ楽しさ、嬉しさを知ってほしんやけどなぁ。」(負け続けて嫌になる前に)
飼い主様とどんよりした気持ちでネガティブな言葉吐きながら開会式観てたんやが、おーが的にまだ道はある。
「まず、背負いしかあれへんのやから、警戒してれば食らわんちゃう?」
「あれは食らうね。」
「・・・あのスピードやもんなぁ。けど、一本無けりゃいんじゃね?」
「で?」
「UKT得意の寝技に持ち込んで・・・」
「背負われて有効すら無くても、あのレヴェルの子が押さえ込みに来ない訳ないし、何度もかわしきれないよ。」
「まぁ、そらそうやわなぁ・・・。」
背負いは横にずれちゃえば投げられずに済む上に、大チャンス(脇腹に膝蹴り、後頭部や首筋に手刀、鉄槌、後頭部ひっつかんでフェイスクラッシャーetc)につながる。
そこまでの技術はあれへんにしろ、一本無ければワンチャンスが望めるんやないかと。

開会式が終わって、試合が始まる。
UKTの出番は19番目。観覧席から見てると、この子が相手やったらUKTは勝てる。なんて子が何人も居て、UKTのくじ運の悪さに苦笑してるうちに時は来た。


畳に上がり、場外との境界線になる赤い畳の外で相手と向き合う。一礼して戦場へ。
ここまでの動きから、緊張は無い。ちょっと気が逸ってるかな?てくらい気合充分。
主審の合図で試合が始まった。
相手に掴みかかるUKTの動きが一瞬止まる。

「あのバカ、また合わせる気か。」

初めて当たる相手の時必ず見せる癖、相手の利き手を確認する感じ?で相手に掴ませてから自分が掴む。
掴んで軽く足を飛ばして牽制。自然な流れに見える感じでNくんを軸に時計回りで体が入れ替わる。

「あ!うわぁ・・・。」

予定調和的に背負い投げが決まって、UKTの背中が畳に着く。
が、主審の手は真上やなくて水平に動く。

「技あり」

一本負けは免れたが、そのまま当然のようにのしかかってくる。UKTも抵抗するが、何故か自分から天井を向くように体勢を変えて、主審の開いた右手が斜め前へ突き出される。

「押さえ込み」

NくんはUKTの右脇腹から、UKTの背中が畳から離れないように、上半身でうつ伏せに覆いかぶさってくる。
背負いで技ありのポイント取られてるから、このまま15秒?20秒?経てば負け。
奇跡的に一本負けは逃れたが、都合のいいワンチャンスは無く当たり前に押さえ込まれる現実。

が、次の瞬間主審の右手が「押さえ込み」の合図のから左右に振られる。

「解けた」

おーがの目から見て何がどうなったんか解らんかったけど、押さえ込みの体勢が崩れたらしい。
ただ、完全に不利な状態が変わった訳やないから、再度押さえ込まれて・・・

おーがが諦めた瞬間、勢い良く暴れたUKTの体がブリッジした状態から水平に戻ると、そのまま上体が45度くらいまで起き上がる。
ブリッジを潰されただけに見えたんやが、UKTは自分で最大限の反動をつけるためにブリッジし、その反動と上体の力で一気に体を起こすと、Nくんの上半身を自分の体に半ば乗っけたまま掴みかかり固定する。
そして、自分の体を捻るようにしてうつぶせになる。

さっきまでUKTの上にうつ伏せで居たNくんの上体は、UKTに固定された状態。そのままUKTがうつ伏せになったんやから、当然Nくんは仰向けになって、背中を畳につける。

押さえ込み

再度主審の開いた右手が、手のひらを下にして斜め前方に突出される。
が、今度はUKTが上だ。
UKTは何もポイントを取ってへんから、このままの体勢で30秒押さえ込み続ける必要がある。

押さえ込み時間を知らせる時計は、我々観客席に背を向けて設置されている。残り何秒だ?

「そのままぁ!」

おーがの声が響き渡り、じっと状況を見つめる。
UKTは押さえ込みに入って自分で「勝てる」と判断すると休憩する悪い癖がある。
それを知ってるだけに、手練のNくんが一瞬の隙を突いて返してくるのを恐れながら・・・。

主審の右手が静かに真上に上がった

当たり前のように立ち上がるUKT

ぐったりするNくん

「ぅいよっしゃぁぁあああああああ!」大声あげて顰蹙買うおーが(42)

開始線に立ったUKTに主審から勝利が告げられると、淡々とした表情で一礼して畳を下りるUKT。
迎える道場の仲間や先生。大興奮の仲間に体のあちこち叩かれ手荒い祝福を受けるUKT。




大金星




そっとmixiに書き込むおっさん。
ニコニコ笑顔の飼い主様。


特別付録
晩御飯食べながらインタビュー。

おーが(以下「」)「UKTさん、お疲れ様でした。まず、相手の得意な背負い投げで技あり取られましたが、いかがでした?」
UKT(以下「U」)「よくわかんなかったけど投げられてた。」
「・・・あんだけ言われてたのに?」
U「なんかされたのは解ったけど、動けなかった?」
「なんで疑問形だよ《笑」
飼い主様の解説「あれだけ皆に知れ渡ってるのにかかるのは、きっちり上半身の固定が出来てるから。相手は崩されて固定されてるから簡単には逃げれないね。」)
「実際、見てて一本でも不思議じゃないくらい投げられてましたが?」
U「うん、だからよく解かんないんだって。」
「そうですか。投げられた後押さえ込まれましたがいかがでした?」
U「うつ伏せになりたかったけど、なれなくて困った。けど、頭が動かせたから、どんな状態なのか把握して対応出来た。」
「頭が動かせた?」
U「うん。頭が動かせるって事は、肩とかも動くから抜けるのは簡単。肩までがっちり固められると頭動かないもん。」
「はぁ、そんなもんですか。じゃあ返せる自信があったと?」
飼い主様の解説「小学生は投技重視の傾向があって、寝技に練習時間掛けない。多分、地味で飽きちゃうんだろうね。だから、寝技下手な子が多くて、返される、返せる状態がわからない子も多いから、ある程度動けると簡単に返されちゃうかもしんない。」)
U「返せるとは思ったけど、変に動いて肩が動くのが(押さえ込みが不十分である事が)バレるのが嫌だった。」
「なるほど。そこまで固められると返せなくなりますからね。」
U「・・・だって苦しいもん。」
「いや、返せよ!」
U「だから一気に返したじゃん!」
「押さえ返してから不安は?」
U「Rくん(前出のキャプテン)とかYくん(同じ道場の6年生超重量級)みたいにデッカいと手足が届かなくて外れるけど、NくんはUKTと同じような体格だから絶対返されないと思ってた。」
「・・・つまり勝つと?」
U「息がぜぇぜぇいってるの聞こえてるし、返されないなとは思ってたけど、勝つとも負けるとも・・・。」
「?つまり、得意の寝技で押さえ込んで、外されることも無くて安心してた?」
U「余裕《笑」
「あ、その余裕のまま調子に乗って2回戦に挑んだと。」
U「2回戦も寝技で勝とうと思ったんだけどねぇ。」
「あんだけ受けに回って寝技で勝つと?」
U「投げさせてから押え込m・・・」
「だから見事にぶっ飛んで一本負けだったん?投げられて一本にさせない技術とかあるん?」
U「・・・?」
「相手の技受けて返すんと、ただ木偶人形になって好きにさせるんとは違うぞ?」
U「?」
「投げ込みん時の『受け』と実戦の『受け』は違うっての。」
U「!」
「・・・マジか?」
U「お、おぅ・・・。」
「しかも、ろくすっぽ寝技になってへんかったやん?」
U「うん、すぐ待てになってたねぇ。」
飼い主様解説「トーナメント表配られてるから、2回戦の相手の偵察なんか簡単に出来るし、1回戦で有名人押さえ込んで逆転の一本勝ちだよ?周りが寝技に注意て言うに決まってんじゃん?逆にちょっと見れば寝技しかあれへんのバレバレやから、相手は何が何でも立とうとするに決まってんじゃん。」)
U「・・・そっかぁ。」
(※注:コレに関してはおーがと飼い主様の反省点。1回戦と2回戦の間に声掛けて忠告出来てれば違う結果になったと思う。実際見てた感じやと、練習通りに前へ出るスタイルで戦ってたら2回戦も勝てた可能性が高い。)
「ま、なんにせよ1勝おめでとう。再来週の大会も勝てるように練習しな。」
U「うん、ちょっと解った事もあるから頑張るよ。」

うん、まだまだ強くなれるな。