鬼の棲み処

普通な人「おーが」の記憶を逃がす場所、ただの備忘録

ザリガニを食べてみる(完結編)


さて、忘れられやんうちに書いとくとする。
ってか、俺が忘れるっての。




さて、ここまで頑張ってこぎ着けた訳やが、俺的により完璧、万全を期す為にもう一代育てる事にしたんやったよな。




もぅ待てねぇ、我慢の限界や。




いや、食うんを我慢してるんやのうて、ここまで手ぇかけてアメリカザリガニ育ててんのが限界。
この間、どんだけの魚やら水草に窮屈な思いさせて、俺も数少ない珍種育成のチャンス逃してきたか。


ってな訳で張り切って“漁”始める。
水槽からバケツに水移して、ベランダへ捨てに行く。この作業を何度か繰り返して、流木を全部取り出すと、奴らめ右往左往してやがる。
ここで気付いた。




どやって食おうか。




エビ料理言うたら、エビチリ、エビフライ、黄金焼き…刺身。




いや、刺身はあれへんやろ。




もぅ一代先やったら思い切って有り得たんやが、今回は無しやわ。
いろいろ考えた結果、名古屋らしくエビフライと、焦げたマヨネーズの魅力に負けて黄金焼きに決定。


まずは、とっ捕まえたザリガニの凶暴なハサミをむしる。
で、ハサミは叩いて軽く潰してミルクパンの中へ。少量の水入れて出汁取る。
エビフライ用に分けたザリガニの頭んとこに適当に包丁入れて生け締め。
ほんまはどないするんか知らんが、「ビビビビビッ」てなって絶命したから、こんで良し。
尻尾千切らんよう気ぃ付けながら、尻尾の殻はがして、尻尾に縦に切れ目入れて、背わた抜く。
全くエビと変わらんやり方で、下準備は完了。
黄金焼き用は、ザリガニ真っ直ぐ伸ばして、まな板に乗っけると、縦に包丁当てて、男らしく包丁の峰をぶっ叩く。




なんや緑やら黄色のドロリとしたんが飛び散ったんやが気にせぇへん。




まずは油に火ぃ入れる。その間マヨネーズと胡椒混ぜて、黄金焼き用の、人体模型みたく真っ二つのザリガニを出汁にちょいとくぐらせ、たっぷりマヨネーズを盛る。こいつをオーブンに放り込んで、後は待つだけ。
待ってる間に、エビフライ用のザリガニに衣着せて、油ん中へ放り込む。頭付けたまんまやもんやから、パリパリのカリカリんなるまでこんがり揚げる。
最後に、ハサミで取った出汁ん中にキャベツやらニンジンやらタマネギ入れて、スープこさえる。
なんの問題も無く完成。しかも美味そう。

皿に盛り付けたとこで、おかんが帰って来た。




危ねぇ危ねぇ。




俺のやってる事知ったら大騒ぎするに決まってるやろから、素早くハサミの殻をビニール袋入れて、皿持って2階の自分の部屋上がる。




「ごめん、腹減ったもんやから、台所使た。片付けしといて。」




おかんの


「えらい本格的になんか作ったんだねぇ。」


言う声聞きながら部屋のドア閉める。




本格的ザリガニ料理。




いよいよ試食。
試食言うにはきっちり量あるんやが、不味かった時ん事考えてへん辺り俺らしい。


まずは、エビフライ風ザリガニフライを尻尾からかぶりつく。


「サクッ、パリパリ…ガリガリッ。」



正味、食い辛い。
カルシウム摂らせる事考えたせいかどうか知らんが、エビと比べて殻が硬い。
同時に身のプリプリ具合もエビより数段上。
こっちは鮮度が関係してる気もするが、歯ごたえは抜群。
ただ、味は意外に癖あれへんのやが、味自体も薄い感じ。
続けて頭の部分にトライ。


「バキバキ、ガリッ、ガキッ…。」


うん、硬い。ただ、味は悪くない。
完全養殖の恩恵か、泥臭さは全くあれへんくて、多少覚えのあれへん微妙な苦みはあるんやが、問題無く美味い。


「コレ普通に美味いやん。ってか、商売出来んのとちゃうか?」


口ん中ガリボリ言わせながらつぶやく。
お茶で口ん中流すと、次は黄金焼き。
つまようじで身ぃほじくり出して口に入れる。
うん、美味い。身のパサパサ感は多少気になるが、こんなもんやろ。けど、気付いた。
美味いのは焦げたマヨネーズであって、肝心の身の味がせぇへん。
マヨネーズ盛り過ぎやってんで、こそげ落として再度味見。




「お!美味いやん!」




俺的には食い辛いフライよりも、こっちの黄金焼きのが好きかも。
ただ、頭んとこはマヨネーズ大盛りのがえぇみたいで、時々微妙な苦味感じた。


数分後、ザリガニで腹膨らした俺は、空んなった水槽見ながら、ちょっと切ない思いを胸に殻を片付ける。
厳重に殻を包んで、皿持って下に降りるとおかんが微笑んでる。




「これ、良い出汁出てるね。美味しいわ。」




スープもイケるそうですよ。