鬼の棲み処

普通な人「おーが」の記憶を逃がす場所、ただの備忘録

衝動

奴が別れ際に言った

「2日に1度位はエンジンかけてやってくれ。」

てな言葉を守り、帰宅後すぐセルを回す。
「キュルキュルキュル…」
かかる気がしねぇ。チョークを引いたり戻したりするがダメ。そのうちセルの回りすら怪しくなる。

「しゃあないな」

1人呟き押しがけ開始。ギアを2速に入れ、押してはクラッチをつなぐ…押してはクラッチをつなぐ…いい運動になるね(w
いい加減汗をかいたところでやっとかかる気配が。
頼りなく回り始めたところでアクセルをゆっくり開ける。2呼吸程間が空いて回転が上がり出す。

完全に燃調が狂ってる。関東仕様のセッティングだとこうなるのは解ってた。
群馬から持ってきた嫁さんのKP61もそうだったから。
そこそこ暖まれば少しはマシになるんだが、アクセルを開けていないとストールしちまう。

「厄介だなぁ…。」

見上げた空は星が瞬き始め、タバコをくわえた俺は頬が緩む。

「ゆっくりやっていこう。走れるまで時間はある、慌てる必要は無い。」

口をついて出た言葉は嘘だ。左足はギアを上げ、エンジンはゆっくり回転を上げる。
近所のスタンドでレギュラーを1000円分入れた後、家の周りを数週。
あはは、走っちゃったよ、俺。こいつはやめらんねぇや。